公開: 2019年7月23日
更新: 2019年7月25日
ヨーロッパの中世、13世紀のイタリアに生まれ、修道院で子供時代を過ごし、その後、当時のヨーロッパ世界に誕生した大学の1つ、ナポリ大学で学び、その後、ドイツのケルンでアルベルトゥス・マグヌスの下で学び、1252年にパリ大学で学位を取得、1257年にパリ大学の神学部教授になりました。トマス・アクィナスは、アルベルトゥス・マグヌスの指導で、古代ギリシャの哲学者、アリストテレスの哲学を深く学び、キリスト教の神学にアリストテレスの倫理学を応用した、中世ヨーロッパの神学を確立しました。そして、「神の存在」に関する証明である「実在論」を唱えました。この実在論は、人間が「神」と言う言葉を理解できるのは、少なくとも「神の概念」が人々の中に理解できる形で存在しているからであり、「神の概念」が存在することは、神が存在することを意味しているとする議論です。これに対して、イギリス人のオッカムは、「神の概念」は、人間が便利のために作り出したものであり、「概念の存在」が「その概念が意味する実体(この場合は神)が、本当に存在していることにはならない」と主張する唯名論を唱えた。オッカムの「存在」は、近代になって理解されるようになった、同じ現象を複数の人々が、別の時間に別の場所で経験した場合にのみ「存在が証明された」と言える経験主義の基礎となった議論です。
山本芳久、「トマス・アクィナス」(2017年)、岩波新書